いくみ「(う……何だか股間が冷たい……)」

薄い布一枚を挟んで、ぴったりと割れ目に押し付けられたローターが変な感じだ。

いくみ「(動いてないのに、動いているような……痒いと言うか……)」

ふと、以前これでイッてしまった時の事を思い出す。

いくみ「(ま、まあ……動かさなきゃいいんだよな)」

無線になっているリモコンを、ポケットに入れる。
とにかく、体裁さえ整えておけばいいんだ。使わなければいい。

いくみ「(行くぞ! そんで霧さえ見つけたら、こんなもん祐志に突っ返してやる!)」

いくみ「(……って、それだと今穿いてるショーツごと、渡す事になるのか)」

それは……避けとこう。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・。

急いだので、学園に行くときの制服のまま、祐志の指定してきた電車に乗る。

いくみ「(意外と混んでるなあ……んくっ)」

既に通学に使われる時間帯は過ぎているというのに、意外と人が多い。時差通勤のサラリーマンが意外と多いのだろうか。
電車に乗り込むと、グイグイと人の波に押されて窓際まで運ばれる。

いくみ「(うわっ、とっ、と、と)」

以前なら押し返している所だが、なんだか物凄い力で押されて、とても押し返せない。
周囲の背の高さも、なんだか圧迫感がある。

いくみ「(そうか、今の身体じゃ、電車の感覚も全然違うんだ……)」

発車音が鳴り、電車が動き出す。

いくみ「あうっ、く……」

何だか、ただ窓に押し付けられるだけの力が、暴力的なまでに感じる。
男って……力の行使そのものが乱暴なんだなあ。
どうしても控えめな自分の力と背丈で、妙な不安が膨らんでいく。

いくみ「(くそっ。男に戻ったら、電車の中でも紳士的に振舞ってやる……)」

時々、電車の中で彼氏に守られてときめく、という話を聞くけれど、今なら妙に納得だ。
こういう狭い空間だと、特に体格の差を感じ取りやすいというか……

いくみ「あうっ、うっ……ン」

窓に押し付けられた勢いで、股間がギュッと締め付けられる。
忘れていたローターの冷たくて硬い感触が、脳をキュン、と突き抜ける。
あ……そうだ……もし今、ここでこれを動かしたら、俺……どんな風に感じるのかな……